「20周年の集い」参加申込開始しました!

Q4.一人当たりの発言時間は気にする?

時間ではなく機会を確保

参加者の人数が多い場合(例えば20人以上)、発言時間についてはあまり気にしません。もちろん、一人(ないし数人)の参加者があまりに多く発言するとき、またテーマに沿っていないと感じられる発言で盛り上がりそうなときは、「少し他の人の考えも聞いてみましょう」、(あまり発言していない人に)「どんなことを考えていますか、何か発言することはありませんか」と差し向けることはあります。全く発言しない人がいても、特に問題はないと考えています。

参加者の人数が少ない場合、発言の機会を全員に対して確保する配慮はします。ただ、発言「時間」まで考えることはありません。発言時間よりも、参加者一人一人がテーマに向き合っている感じ(あくまで「感じ」ですが)を気にしています。

堀江剛(正会員)

押し付けや話題からずれる場合は

一人あたりの発言時間が長くなると、気にする場合もあります。同じ方が発言する回数が多くなり、かつ、その方の発言時間が毎回長い場合は、気になることがあります。例えば、その方が、ご自身の意見を他の参加者に押し付けるような内容のまま長々と話されたり、話されている方がどんどんと興奮していき話題からずれていく場合には、話されている内容を確認するような質問をして、できるだけ自然に話す時間を調整するようにします。「内容が盛りだくさんになってきましたが、一番伝えたい考えは何ですか?」などと質問して、他の参加者にも話す機会を提供するようにしています。また、差別的な内容を発言しそうな流れになってきた時などは、発言する時間も長くなる方が多いので注意しながら耳を傾けています。

一方で、その方が発言しながら、ご自身が考えていることを言語化する過程で話があちこちに寄り道して、結果、話が長くなってしまった場合などは全く気にしません。ただ、話が長くなるとどうしても話題にあがってきた内容に関する考えが複数登場することも多いため、論点を整理するために「話題が変わってしまったので、まずは今仰ったことを板書しておきますね」などと伝え、板書することがあります。発言時間の調整のためというよりは、話の流れや見通しを明確にするためですが、時に、発言時間が長くなりすぎないように作用することもあります。

哲学カフェにおいて発言する人もいれば、一言も言葉を発することなく帰られる人もおられますので、基本的には発言していない方のために発言時間が長いからと制限する必要はないと考えています。

玉地雅浩(正会員)

対話の質や多様性が失われることも

哲学カフェでは、「自由な対話」や「安心して話せる場」を大切にすることが多く、一人当たりの発言時間を厳密に計ることはあまりありません。しかし、実際の対話の場では、参加者の発言量にばらつきが出ることも多く、「ほとんど話さない人」や「話しすぎる人」が生まれてしまうケースも少なくありません。こうした状況において、どのように全体のバランスを取るかは、ファシリテーターや参加者全体にとって重要な課題となります。

発言が少ない参加者がいる場合、それを「問題」と捉えるかどうかは、哲学カフェのスタンスによって異なります。「話す・話さないは自由」という考えに基づけば、無理に発言を促すことは避けられるべきです。しかし、特定の人たちばかりが話してしまうと、全体としての対話の質や多様性が失われてしまうこともあります。発言が少ない理由はさまざまで、「ただ聞いていたい人」もいれば、「話したいがタイミングがつかめない人」もいます。後者にとっては、対話の構造やルールが、自然な発言を妨げている可能性もあります。そのため、発言を促すしくみをさりげなく取り入れることが、「話したくても話せない人」に対して有効となるのです。

そのようなしくみの一つとして有効なのが、「コミュニティボール」の導入です。それは、対話の秩序と安心感を支えるシンプルな仕組みで、話す人がボールを持ち、終わったら次の人に渡すことで発言の順番を明確にします。ハワイ大学を中心に発展したp4c(philosophy for children、子どものための哲学)では、特に大切なツールとされ、ぬいぐるみや布製のものが使われます。また、参加者全員で毛糸を巻き付けて一つのボールを作るプロセスもあり、それによって「この場はみんなでつくるもの」という象徴としての意味も込められます。このように、誰もが安心して対話に参加できる「安全な空間」を支える存在となっています。

コミュニティボールのメリット:

①発言の可視化

ボールを持っている人だけが話すというルールにより、自然と一人の発言が長くなりすぎるのを抑制します。また、今誰が話しているのか、誰が次に話すのかが視覚的にわかるため、発言の順番が混乱しにくくなります。

②発言しやすい空気の形成

ファシリテーターが「次に話したい人(もしくは、発言者が次に話しを聞いてみたい人)にボールを渡してください」と促すことで、話したくても入るタイミングを見失っていた人が、自然に発言の機会を得ることができます。

③主体的な対話への促し

コミュニティボールは、あくまで参加者同士がボールを渡し合うものであり、ファシリテーターが司会進行をするものではありません。これにより、参加者全員が「場をつくる主体」であることが強調され、対話が一方向的にならずに済みます。

哲学カフェにおいて、一人当たりの発言時間を厳密に管理する必要はありませんが、発言が少ない人が置いていかれないようにする工夫は必要です。そのためのツールとして、コミュニティボールの導入は、対話の平等性と安心感を高める効果が期待できます。重要なのは、「全員が話すこと」よりも、「全員が場に参加していると感じられること」です。そのための仕掛けとして、発言のタイミングや順番を補助するコミュニティボールの存在は、場を開く道具として価値があるといえるでしょう。

稲原美苗(正会員)

最近の記事
PAGE TOP