安心して対話するための「作法」
ルールは哲学カフェに参加する人たちがお互いを思いやり、安心して対話ができるための「作法」だと思っています。神戸で哲学カフェを始めて20年余ですが、カフェを行いながら少しずつ反省を繰り返しながら決めたルールが以下の7つです。
- 話すときは挙手をし、進行役の指示に従う
- 他の参加者の話は最後まで聞き、途中で口を挟まない
- 一人で長時間話さない
- 他の参加者にも理解できるよう、わかりやすく話す
- 本で読んだ知識や他人からの受け売りではなく、自分の考えを自分の言葉で話す
- 他の人の考えを批難・中傷したり、自分の信条を一方的に押し付けたりしない
- お互いの意見の違いを認めあう
参加者自身が対話の場を創れるよう、これらのルールは、毎回最初に参加者に伝えています。
藤本啓子(正会員)
外からの押し付けではない「心得」
この二十年ほど、ほぼ変わらず「人の話をよく聴く」「自分の言葉で話す」「自分の考えが変わることを楽しむ」という心得を掲げています。「ルール」ではなく「心得」というのは、外から押し付けられる規則ではなく、対話を有意義にするために各自が心に留めておいてもらいたい心がけ、くらいの気持ちです。そもそも、哲学カフェには確立した「ルール」などありません。
大前提は「率直に、自由に、遠慮せずに話す」であることをまず伝え、とはいえ「対話が楽しくになるために三つの心得を心に留めてください」と断って、心得を伝えます。
「人の話をよく聴く」には、人の話をよく聴くところからよい思考が生まれることを、「自分の言葉で話す」には、「伝聞ばかり話さない」「普段使っている言葉で話す」の二つの意味があることを、「自分の考えが変わることを楽しむ」には、言葉を交わしながらともに考えるうちに、自分も他の人も考えが変わっていくのが哲学カフェの醍醐味であることを、それぞれ付け加えます。
他に「話さないことも自由」「人それぞれで終わらせない」などの心得を、場面に応じて付け加えることもありますが、心得が三つを超えると覚えきれなくなってしまうこともあり、できるだけ三つに抑えるようにしています。
オンライン開催の時には「できれば顔を見せて参加する」「普段は音声を切っておいて挙手をして指名されてから音声を入れて発言する」を別途伝えます。
寺田俊郎(正会員)
全員の思考への「期待」
わたしは「ルール」はできるだけ言わないようにしています。場の主旨がつたわれば参加者は自分で調整ができると思っているので。しかし、言葉で伝えなくても、席の配置等の場のしつらえや、進行役の振る舞いで暗黙的に伝わることは色々あります。
わたしがまず伝えようとしているのは、参加者全員への「期待」です。たとえば、「発言しなくてもいい」というルールを掲げて行なわれる対話もありますが、私は参加者が本人の意思で参加する哲学対話の場合は、基本的には一重の円をつくって、順番に回していきます。「発言しなくていい」と先回りせずとも、「パスしていいですか」と言われれば、一旦飛ばして、もう一度聞いたりするなど、適宜対応すればよいとおもっています。いずれにしても、全員の思考への「期待」をしつらえと進行で示しているつもりですし、他の参加者にも、どこから考えが進むかはわからないので、全員に(自分自身にも!)期待しながら聞いたり、話したりして欲しいと伝えています。
こういう形式で進める前提としては、参加者が自由参加であることに加え、対話の問いが、参加者全員——専門知などを持った一部の人ではなく——に回答を期待したくなる、答えてみたくなる、十分に関心のもてる問いになっていることも重要になってくるかとおもいます。
鈴木径一郎(正会員/大阪大学社会技術共創研究センター)
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こちらの問いは、カフェフィロ編『哲学カフェのつくりかた』(大阪大学出版会)のQ&Aの中からピックアップしたものです。このページでは、メンバー三者三様の回答を示しましたが、『哲学カフェのつくりかた』には、執筆者13名共通の回答が掲載されています。そちらもどうぞご参照ください。
